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天女の声 ちいさな愛の歌


今回、紹介するのは「ちいさな愛の歌」。
作詞保富康午、作曲菊池俊輔、編曲森岡賢一郎、そして歌唱は堀江美都子の布陣で、1975年に放送されたTVアニメ「UFOロボ・グレンダイザー」の挿入歌として作られた。
「ちいさな愛の歌」はアニメソング豊穣の時代である70年代が産んだ、宝石のように美しい歌だ。主題歌でも副主題歌でもなく、挿入歌であるがゆえに、この曲は目立つこともなくひっそりとしている。
恐らく知名度は相当に低い。僕自身でさえ、この歌の存在に気付いたのはなんと今年になってから。30年間、こんな歌があるなんて知らなかった。それどころか収録したCDは手元にこれまたなんと、20年以上も前からあったというのにこの歌を聴き飛ばしていた。
僕が持っているのは日本コロンビアが1989年に発売した「ロボットアニメ大全集vol1」という2枚組のベスト盤だ。70年代のマジンガーシリーズを主として、いくつかのロボットアニメ番組の主題歌、副主題歌、そして一部の挿入歌を加えて収録している。
このCDは既に絶盤だが、挿入歌を完全に網羅した完全版といってよいCD集が新たに発売されて今も現役なので心配はいらない。
僕自身は子供の頃、グレンダイザーをはじめ、ロボットアニメの大半は番組本編をみることがほとんどできなかったので、挿入歌に思い入れがない。だから、こうしたCDを買っても主題歌と副主題歌を聴くことがほとんどだった。「ちいさな愛の歌」も聴き流すどころか、聴くことすらしていなかった。
しかし、最近になって、改めて堀江美都子や水木一郎ら、日本コロンビアが抱えていた「アニメ歌手」の実力をしみじみと感じるにつれ、もっと彼らの「新しい」歌を聴きたいと思うようになり、聴かずに飛ばしていた挿入歌も聴くことにしてみた。

白樺の みどりの葉
ゆれる 牧場に
あの人の 声だけが
遠くこだまする
果てしない空を見て
誰のこと 思い出すのかな
そよ風に 若草に
ほほ寄せて きょうも歌おう
平和の 歌が
いつも いつも つづくように


何気なく聴いていて胸を突かれたのは、やはり堀江美都子の類稀なる声の美しさだった。
「え、なに、この声!?」
そう驚かされるような澄んだ、雑味のない歌声が僕の耳を虜にした。
上の歌詞を読んで、あなたは何を思うだろうか。別に、と思うかもしれない。グレンダイザーという物語を知らない人が読んでも、あいまいな情景しか思い浮かばないかもしれない。
だが、堀江美都子が歌い始めれば、あいまいと漠然としていた情景が急に形をなし、生き生きと広がってくるのだ。人の声という媒体を通して、初めて生きてくる歌詞なのかもしれない。
本当にここで聴ける堀江の声はあまりに美しく、どうしてこの歌がただの無名の挿入歌として終わっているのか、納得がいかないほどだ。
堀江美都子の声の美しさは、知る人ぞ知る、で終わらされている。歌謡界の本流から遠く外され、鬼の子扱いされていると言ってよい。いったい、どれだけ音楽評論家がいるのか知らないが、誰が堀江美都子を正当に評価しただろうか。アニメ歌手というだけで彼女を評価できなかった音楽評論家など、ゴミも同然といいたい。
だが、幸いだったのはその声が、歌がすばらしすぎて、いい大人になっても忘れられない曲をあまりにたくさん残したので、凡百の歌謡歌手ならとうの昔に忘れられている世代であるにも関わらず、今も静々とアルバムが発売されているということである。
菊池俊輔はこの当時、一連の仮面ライダーシリーズの歌と劇判を手掛けている。またマジンガーシリーズと双璧をなすゲッターロボの音楽も担当している。
マジンガーZとグレートマジンガーは渡辺宙明が担当しているのだが、なぜかグレンダイザーは菊池が引き継いでいる。主題歌である「とべ、グレンダイザー」も勇壮かつ旋律の美しい名曲だ。
「ちいさな愛の歌」で菊池は歌詞の一語々々に区切るように旋律を授けている。これにより、歌い手である堀江の向こうにいる、歌詞の言葉を紡ぐ少女が実際に語りかけてくるような感覚を覚える。
旋律(メロディー)を区切る、というのは歌い手にとって技量を要されるのではないだろうか。声を巧みに制御しないと歌が細切れになってしまうだろう。旋律が途切れているようで実はかすかにつながっているという発声が求められる。
堀江は芯のある声でいながら柔らかさを失わず、語り部である少女となって僕たちにささやきかけてくれる。
この歌のさびは「そよ風に 若草に ほほ寄せて きょうも歌おう」の歌詞の部分だが、「そよ風に」で伸びあがる堀江の声は絶品である。

堀江は歌謡史の陰に隠れた天才だと思う。今になって、この人の歌を聴きながら子供時代を過ごせたことは幸せだったのだと思う。堀江は確か13歳頃でタツノコプロの「紅三四郎」の主題歌でデビューしたので、僕と10歳くらいしか違わない。まだまだ声も現役であることが嬉しい。

余談だが、「ちいさな愛の歌」さびの旋律は、特撮番組「アイアンキング」の副主題歌である「ひとり旅」のそれと一緒である。
作詞佐々木守、作曲菊池俊輔、歌唱子門真人の布陣。放送はこちらの方が早く1972年。確か夕陽を背景に主人公が馬にのってどこかへ向かっている映像とともに流されていた。

まぼろしの 緑もとめて
ただひとり 燃える荒野を
しあわせを知らぬ男が
馬の背にゆられてゆくよ
ラーララ ラララララー ラーララー

どこにあるはずもない、どこかへ旅立っていくような感覚をもたらしてくれるこの歌も、今でも僕が好きな歌の一つである。
さびの「しあわせを知らぬ男が」が「そよ風に 若草に」と同じ旋律。美しい菊池節の名曲たちだ。
「ひとり旅」も現役でCDでも購入できる(いつ廃盤になってもおかしないが)。ダウンロード販売のOnGen http://www.ongen.net/index.phpで315円でも販売されている。

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[C34] 愛しくも狂おしい日々

ブログ主様が5年近くも前に書かれた記事に、今、こうしてコメントをさせて頂きます。
…久々に「堀江美都子」の名で検索しました処、こちらへ辿り着いた次第です。私は齢53の、一介の職人として関東地方南部にて、生業を営む者です。
私は高校生時分に「キャンディ・キャンディ」の大ヒットで堀江美都子の名を知りました。雑誌などで彼女の姿を知った時から強い興味を抱いたのです。
~「紅三四郎」という、タツノコ・アニメ作品が、私が小学3年生の頃にTV放映されました。ほぼ毎週、見ておりましたが当初は青春歌謡の、美樹克彦の歌う主題歌でした。…とても良い曲で、よく口遊んだものです。ところが或る週から突然、「男の子」の声で、全く違う主題歌に替わったので、吃驚しました。
少年であった私が言うのも奇妙な話ですが、TVから流れてくる「男の子」の、何とも直截な響きを持つ歌声に打たれてしまい、不思議な陶酔と胸の疼きを覚えたものです。
…言うまでもなく、それは男の子の声ではありませんでした。12歳の、堀江美都子の声であったという事を、高校生になって知るのですが、その時から私は彼女の虜になってしまったのです。
友人とともに乏しい情報を交換しあい、堀江美都子の出演するイベントに幾度も出掛け、レコードを買い、サインを貰い、握手をし、写真を撮らせて貰い…といった、追っかけの日々が続きました。
どの人気歌手にも熱心なファンが居るものですが、私から見た堀江美都子のファンは、やや常軌を逸している所が有る様に感じました。斯く言う私がオーバーヒートしていたのです。
…相手はアニメの主題歌で大ヒットを飛ばす程の大歌手であるのに、たかが男子高校生風情が叶わぬ思いを抱いて奔走する。このままでは、自分はおかしくなってしまう。
さすがに自制し、堀江美都子の名を追い掛ける事を止めたのです。
客観的に見て、堀江美都子という歌手は(私の年代の価値観で言えば)、紅白に出場すべき歌手であった筈です。少なくともキャンディ・キャンディ以後、暫くは世の中的にも、その価値は十分だったでしょう。
ただ、彼女のファンの、ひとつの心理として「あまりメジャーになって欲しくない」という、身勝手な部分が心の片隅に有るかと思います。
「偏愛」というか、堀江美都子の熱心なファンというのは、彼女の事を余りに好きになり過ぎてしまう傾向が有るかもしれません。…もちろん、「良識的なファン」も大勢居られますが。
私自身は、これまで幾度か堀江美都子のファンに成りかけては自重し…という事を繰り返しました。
彼女にも旦那さんが居て、お子さんも居る。
…我ながら馬鹿です。嫉妬するような、ホッとするような、そんな心持ちです。
いまだに声の張りを失わない、素晴らしい歌い手であり、そんな堀江美都子の「隠れファン」は、全国の津々浦々に居る事でありましょう。

[C39] もえる愛の星

この歌はほぼリアルタイムで知ってましたが、サビのメロディが「ひとり旅」と同じということには気付いてませんでした。

ところで、「ちいさな愛の歌」が『UFOロボ・グレンダイザー』の挿入歌として作られた、というのは厳密には正しくありません。その前に『宇宙円盤大戦争』という、同番組のパイロット的な劇場作品があり、そのEDテーマとして「もえる愛の星」(ささきいさお歌唱)が作られました。「ちいさな愛の歌」はそのカラオケを再利用しつつ全く異なる詩を付けたものです。ちなみに『宇宙円盤大戦争』のOPテーマ「戦え! 宇宙の王者」のカラオケを再利用したのが「宇宙の王者グレンダイザー」です。グレンダイザーの楽曲のうち、この2曲だけ編曲者が異なるのはそのためです。実は「もえる愛の星」もグレンダイザーの挿入歌として再使用されましたけどね。

ところで、『マジンガーZ』『グレートマジンガー』のスタッフは別時間帯で始まることになった『鋼鉄ジーグ』の担当になったので、音楽担当の宙明氏もそちらに一緒に行ったようです。

なお、『宇宙円盤大戦争』は本来、マジンガーシリーズではなく、兜甲児も登場しません。TV化するにあたり、おそらく(ここからは私の想像ですが)、デューク・フリードだけで視聴者を確保できるか心配だったために助っ人として甲児を登場させることになり、放送時間帯もマジンガーシリーズの枠を継承したんだろうと思います。
  • 2016-03-12 05:59
  • JoJo
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  • 編集

[C41] 管理人です

JoJoさん、コメントありがとうございます、ご指摘の通りで、私の持ってるCDにも「もえる愛の星」入ってました(^_^;)
でも、歌唱の魅力は堀江美都子に軍配があがるかなあ、と。

もう1件のコメントもありがとうございました。今はプロレスに寄り道しておりますがご容赦ください。
  • 2016-03-18 00:23
  • 管理人
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