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スターチャイルド

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上の図は1983年にキングレコードが宣伝用に作成したパンフレットだ。一応、定価200円也とあるが、レコード店でただでもらえた。ずっと僕のお宝として保管している。
この冊子は裏表の表紙を合わせて全70頁あるのだが、本当に今みても懐かしく、充実した内容になっている。
表紙を含めて多数のイラストを描いているのは、やぎざわ梨穂。このイラストを見て、この名前を聞いてすぐに反応できるのは、僕と同じ40代、下手すると50代の世代だろう。かつてアニメパロディで一世を風靡した月刊アニメ雑誌「OUT」に漫画を投稿していた読者の1人で、実力が認められて同誌でセミプロ扱いとなり、連載もしたことがある。単行本も少しだが出たようだ。「OUT」も廃刊となって久しい。様々なことが思い出される表紙だ。

この「STARCHILD HANDBOOK」は恐らく、この1冊だけしか発刊されなかったのだと思う。また、内容の充実度に比べて、なぜかあまり話題にもならなかった。非常に残念である。
目次を転載しよう。
1. “スターチャイルド”よちよちある記 藤田純二
2. HISTORY OF STAR CHILD
3. アニメ音楽対談<渡辺岳夫 VS すぎやまこういち>
4. 子供たちの、子供たちの、子供たちのために 田中研二
5. レコードコミックは今 南田操
6. 「SF特撮映画音楽全集」全10集の構成を終えて 中島紳介
7. JACKET ILLSTRATION GALLERY
8. POSTER ILLSTRATION GALLERY
9. いいたい放談・座談会
10. スターチャイルド・レコード・リスト
11. スターチャイルド・ショップ・リスト
12. 編集後記

・・・今、眺めてみても、僕にとっては壮観な構成だ。スターチャイルドレーベル立ち上げの親である藤田氏の雑感、スターチャイルドレーベルの小史、そしてなんといっても渡辺岳夫 VS すぎやまこういちという超豪華、もはや実現不可能な夢のカードが組まれているのである。しかも素晴らしい試合内容であった。
本当のところを言えば、実際は70頁中28頁はレコードカタログになっているので、ものすごい情報がこれでもかと詰まっているわけではない。だが、当時人気だった声優(井上和彦や水島裕など)のオリジナルLPがカタログに記載されていたりして、やはりアニメ音楽史にとってはそれなりに貴重な資料だと思う。
当然のことながら、この冊子の著作権はキングレコードにあるので、無断転載はダメなのだけれど、かと言ってキングレコードがこの冊子を復刻することも先ずありえないので、黄金カードの内容くらいはいずれ、ここに再録したいと考えている。
ここでキングレコードのアニメレコード黎明期について触れておこう。
70年代末に「宇宙戦艦ヤマト」が社会現象になるほど成功したことをきっかけに、アニメ関連の商品がレコードも含めて充実するようになった。同時に過去のアニメ作品(70年代から振り返るわけだから、当然、「鉄腕アトム」に始まるモノクロアニメから70年代アニメが対象だ)やウルトラマンに始まる特撮作品の再評価が始まった。
そうした潮流の中で、キングレコードはさりげなく「ウルトラマン大百科」なるLPを発売した。「ウルトラQ」から「ウルトラマンレオ」までのウルトラシリーズの挿入歌も含む歌を、ドラマ本編の台詞も交えながら収録したものだ。創刊間もない月刊「アニメージュ」にひっそりと広告が載っており、僕はこのカセットテープ盤を購入した。

若い世代にはどーでもいい昔話を一つ。70年代末当時の音源は、ラジオ、LP、そしてカセットテープだった。僕は当初、LPプレーヤーを持っていなかったので、カセットを買ったりしたわけだが、実はカセットの方がLPよりも時間的制約が多くて、同じ商品でありながら、なんとカセットテープでは一部の音源(ウルトラマンレオの最初の主題歌の一部とか)を割愛するという処置を行っていた。
・・・ひでえじゃん。それって。しかもそれだけではない。そんなくせして、LPよりも高価格だったのだ!!
因みに当時の普通の人向けのLPは標準価格が2800円。アニメや特撮はジャケットに「子供向け」と記載すれば税金が減るので2200円が標準価格となっていた。アニメファンはこの「子供向け」という記載を蛇蝎のごとく嫌ったが、今となっては「いいじゃん、安くなるんなら」と思える自分がいる。
しかし、この「子供向け」も、手元に残っているガンダムやイデオンのLP(初盤は事情により一度廃棄し、再発盤を買いなおしたもの)では既に記載されておらず、途中で記載がなくてもよくなったようだ。
で、カセットテープだといくらかというと、確か2500円程度だったと思う。
ひどいっしょ?

本題に戻るが、ウルトラマン関連のLPを次々とキングレコードは発売していたのだが、ファンからの要望が強く、1979年、ちょうどガンダムが初回放送される直前にザンボット3のLPが発売されたのである。
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もはや記憶が定かではないが、僕は発売してすぐの頃にこのLPを買っていたと思う。ようやく安物のセラミックカートリッジ式だが、レコードプレーヤーを買えたので、今度はLPを選べた。
上記のやぎざわ女史の漫画に「でも当時は、BGMだけではあまりにも不安だったので」という台詞がある。
TVアニメのBGMをステレオ録音するようになったのは「宇宙戦艦ヤマト」の商業的成功が、アニメ音楽も商品になると認識されてからだ。それまではTVはもちろん、劇場用を含めて、アニメ音楽は使い捨て扱いだった。
1978年にヤマト⇒松本零士ブームに乗って制作された「宇宙海賊キャプテンハーロック」「銀河鉄道999」のBGMはステレオ録音だったが、まだまだTVアニメのBGMはモノラル録音が主流であり、つまり商品化することを前提としていない、まさか商品になるとは思われていなかった存在だったのだ。

キングレコードはこのザンボット3の後、続けて「機動戦士ガンダム」のサントラ盤を発売する。運よく初回放送からこの作品に接することができた僕は、すっかり渡辺岳夫の音楽に魅了されてしまい、発売日が待ち遠しかったことを覚えている。
このガンダムで初めて、キングレコードはアニメのBGMをステレオ録音した。だが、信じられないことだが、冒頭に掲げたSTARCHILD HANDBOOKの記載には次のようにある。

この「ガンダム」からは、TV版のBGMを録る段階から、レコード化を意識した音作りを・・・ということで、それまではモノラルで録っていたBGMを、全てステレオ録音にしました。なにもTV版のBGMをステレオで録ることはないだろう、めんどくさい・・・等々の声を後ろに聞いての制作でした。

ステレオ録音することがめんどくさくてやってられないって・・・・。
2010年の今からは信じられないことだろう。だが、物事の創世期とはそういうものだ。
無茶なこととめんどくさいことは次元が違う。だが、君に情熱があっても、えてして年配の人間は「そんなめんどくさいこと、できるわけないだろう!?」という。
でも、それを鵜呑みにしていると、いつの間にか君がいる組織は時代遅れになっている。
もし、この時、藤田氏が「ですよね、ステレオで録音するのってめんどくさいですよね」と妥協していたら、スターチャイルド立ち上げどころか、キングレコードはコロンビアレコードに大幅に負けまくり、エヴァンゲリオンの成功はおろか、没落の一途をたどっていたかもしれない。
どんな時代も、どんな業界でも、新しいこと、いや少しでも状況をよくしようという時に、いらない抵抗は出るものだ。だが、そんな抵抗にいちいちめげていたら、君は潰れるだけだ・・・という、教訓話で今日はひとまずここまで。
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