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星の子の光と影 藤田純二氏とスターチャイルド

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今回は引き続き、スターチャイルドレーベルと藤田純二氏のお話。
と、言っても、商品を通じて断片的にしか藤田氏のことは知らないのだが、やはりスターチャイルド創世記の功労者として記憶しておきたい方だ。ウィキペディアによるとアニメ制作会社2009年まではアニメ制作会社ゴンゾの代表取締役社長職であられたようだが、ゴンゾが㈱GDHと合併して以後の足取りはわからなかった。

僕が藤田氏の名前を知ったのがいつ頃かは全く覚えていない。前出のスターチャイルドハンドブックを読んだ時にはもう名前を知っていたような覚えがするが、非常にあいまいだ。
ただ、キングレコード関連の記事にまつわって、けっこうアニメ雑誌に登場していたようにも記憶する。
藤田氏は前出のように「宇宙戦艦ヤマト」によるアニメブームを見逃さず、キングレコードのアニメ部門を拡充・充実させ、スターチャイルドレーベルを発足させた人だ。
彼について語る前に、少しアニメ音楽業界の昔話から始めたい。

1970年代のアニメ音楽は日本コロンビアの寡占状態だった。東映アニメおよび特撮、日本アニメーション、タツノコプロなどの音楽は日本コロンビアが独占していたようなものだ。特に次々と作品を制作していた東映系列をおさえていたことが非常に大きかった。
日本のTVアニメは「鉄腕アトム」に始まったが、アニメレコードと言えば、アニメソングのレコードのことだった。元々は日本コロンビアの寡占状態だったわけではなく、朝日ソノラマというレーベルも1970年代初頭まではよくみかけたし、東京ムービーはCBSソニーからも「ガンバの大冒険」を出していたし、「海のトリトン」の主題歌から副主題歌に配置換えになった「海のファンタジー」はクラウンレコードの発売だったりする(しかし、ネットで調べてみても、なかなかどこのレーベルから出ていたか、簡単にわからないものだ)。
それが1970年代後半、ヤマトブームが来る頃には、アニメのレコードと言えば何となく日本コロンビアという状態になっていた。
やはり70年代の日本の商業アニメ、特撮の中核を東映が担っており、その音源を一手に引き受けていたからだろう。これは日本コロンビアの取引先の選択が正しかったということだろう。地道に商売を続けた結果、いつの間にか業界を代表する位置にいたという、賞賛すべき経過だったようだ。
それを示す記事があって、確かアニメージュだったと思う。「地球(テラ)へ・・・」という台詞があったから、1980年から1981年にかけてくらいの頃だろう。各レコード会社のアニメ担当の方を集めての座談会という、なかなか気のきいた記事だった。もちろん実名参加の記事である。ただ、その中に藤田氏がいたかどうかは記憶にない。
雑誌側が「今のアニメ音楽のレコードはほぼ日本コロンビアで占められているが、寡占状態に対する不満はないのか?」という問いかけをしたところ、各社ともに「それはない。これまでの日本コロンビアの努力の結果だと思う」という反応だった。なぜか覚えているのは、日本ビクターの担当者が「以前に竹宮恵子氏とレコード制作をしたことがあり、その関係から劇場用映画”地球へ・・・“のサントラ盤を手掛けたかったのですが、東映とコロンビアさんの結びつきは非常に強くて、割り込めなかった」旨の発言をされていたことである。
ヤマトブームから松本零士ブームが始まっても、彼の作品をTVアニメ化するのは東映動画であり、そうなるとそのレコードはやはり日本コロンビアということになる。市場が拡大しようという時に、日本コロンビアがそれまで地道に蒔いてきた種が大きく枝葉を伸ばした結果、大きな収益をあげることになったわけである。

そんな状況の中で、藤田氏は日本サンライズを取引先に選び、大成功を収めた。
キングレコードのアニメ・特撮部門は先ず、ウルトラマン関連の音源のレコード化を拡充の足がかりにしようとしていた。ただし、ウルトラマンの音源は日本コロンビアも押さえていたようだ。同時期に発売された日本コロンビアの特撮主題歌集にもウルトラマンの主題歌の正規版が収録されていたりした。そこら辺の権利関係については、ダイターン3の白ジャケット事件と関係しているのかもしれない。

そういえば思い出した。前回に紹介した「ウルトラマン大百科」、確か「帰ってきたウルトラマン」と「ウルトラマンA」はカバー版だった!! 正規版でなかったはずだ!! 33年たって思い出した!!

それはさておき、このままでは日本コロンビアの後塵を拝するばかりの中で、藤田氏は「ザンボット3」のLPを企画制作し、更には「機動戦士ガンダム」でキングレコードで初のTVアニメ音源のステレオ収録を敢行したわけである。
当初、ガンダムは無名な少数派にしか支持されないTV番組だった。徐々に人気に勢いがついていったのだが、ここで恐らくキングレコードの首脳陣を大いに驚かせたのではないかという商品が生まれた。
ガンダムのアルバム第二弾である「戦場で」が、TVアニメのLPとしては異例の10万枚の売り上げをあげたのだ。当時としては、よほどの人気作品でなければアニメの、しかもTVアニメのサントラ盤の第二弾を発売するということはまずなかった。ガンダムと同時期の作品で、2枚もLPを出した作品は僕は記憶していない。「宇宙海賊キャプテンハ―ロック」「銀河鉄道999」クラスでもサントラ盤、アニメソング集、そして合唱組曲やピアノ組曲くらいだったと思う。それをガンダムなんていう巷でそんなに名前の聞かないTVアニメのサントラを2枚も出して、その2枚目がかなり売れたのだ。
全くの憶測だが、藤田氏は面目躍如、キングレコード首脳陣は「アニメレコード、売れるやん♪」と勢いに乗ったのではないだろうか。
東映と日本コロンビアの牙城に迫るには、活きのよい取引先を開拓することだ。以後、キングレコードは懐かしの番組復刻LPも交えつつ、日本サンライズ、そして今は亡き国際映画社の作品の音源をレコード化していった。一般大衆への知名度は高くないにしても、熱心な固定客がついてくれる作品をつくるアニメ制作会社を探して、組んだわけである。
そうして、日本コロンビアと比べれば、まだまだではあったかもしれなにしても、キングレコードは日本のアニメ音楽の2番手の位置を目指して駆け上がっていった。

1981年(昭和56年)スターチャイルドレーベルが発足する。
以下はスターチャイルドハンドブックからの引用である。
「やっと来ました、昭和56年、“スターチャイルド”誕生の年です。
 アニメや特撮、漫画などの映像作品に関するレコードの専門レーベルを作ろうと考え始めたのは、この年の初め頃でした。まず、“スターチャイルド”という名前を決め、デザインスタジオにシンボルマークを発注。出来上がってきた何種類かのマークの中から、おなじみの“星の子マーク”に決定。そして、7月5日発売の「哀戦士」のシングル盤から、キングの“ライオンマーク”と並んで“星の子マーク”がジャケットなどに付くようになりました。しかし、この頃はまだ正式なレーベルではありません。そして、10月21日発売の「交響曲イデオン」にて遂に正式発足! 昭和57年の目玉となる作品のシングル盤を従え、“スターチャイルド”はこの日から歩み始めたわけです。
 昭和57年1月からは“ライオンマーク”に代わって、“星の子マーク”だけが、ジャケット等に付くようになりました。
 それにしても、昭和57年にはものすごい枚数のレコードが出されていますね。」
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↑スターチャイルド、誕生

最後の「ものすごい枚数のレコード」の一文には、藤田氏の誇らしさが滲み出ていると思う。上記の文章を読む限り、スターチャイルドレーベルの発足の主体性は藤田氏にあったようだ。会社側も藤田氏の業績を評価し、彼の企画を受け入れ、小さいながらも一国一城の主に押し上げたわけだ。
藤田氏の名前や発言がよくアニメ雑誌に出ていたように記憶していると書いた。実際、どうだったかは当時のアニメ雑誌を片っ端からひっくり返さないと、人間の記憶は実にあいまいなので、嘘をついてしまいかねないのだが、調べる術がない。今回の記事を書くまで、スターチャイルドレーベルの発足が「戦場で」からだと、記憶違いをしていたくらいだ。
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↑あ、こんなところに「子供向」の文字が!!
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だが、藤田氏はキングレコードを、スターチャイルドの名前を広めようと必死だったのではないか。日本コロンビアと同じことをしていては到底、かなわない。あちらは商売の王道を歩んでいる。こちらは何をしてでも、売り込まなければいけない。だから、自分を露出させたのだろう。
今の自分が当時の藤田氏の心境を予測すると、上のようになる。もしも機会があれば、是非、藤田氏ご自身にお話を伺いたいものだ。

しかし、藤田純二氏は1985年にキングレコードから東芝EMIに引き抜かれることになった。東芝EMI子会社のアニメ専門レーベルのユーメックスに、スターチャイルドレーベルのスタッフごと、転職してしまったのである。
そこら辺の細かな事情はわからない。詳細を伝える記事も知らない。ただ、当時の僕は、彼がユーメックスという新レーベルに移動し、当時少年サンデーで局地的な人気を誇っていたマンガ「炎の転校生」「県立地球防衛軍」のイメージアルバムを作成するということを知り、そのLPを買ったのだった。
どちらもなかなかにツボをおさえた名作だったが、今はさすがに絶盤である。

その後のスターチャイルドレーベルは解散もありえたようだが、大月俊倫氏が建て直され、「新世紀エヴァンゲリオン」の大ヒットを経て、現在に到っている。この前は実写の映画宣伝のあとに星の子マークが出てきてびっくりした。

ただ、藤田氏配下の社員もろとも、東芝に引き抜かれた事実はキングレコードにとっては忌々しい「事件」だったのに違いない。なぜ、そんなことになってしまったのか。藤田氏が切れ者過ぎて、計算しすぎてしまったのか。業績が頭打ちになって、キングレコード首脳陣の評価が下がってしまったのか。憶測しかできない。
だが、藤田氏の名前はキングレコードにとって、黒歴史になってしまったのだろう。確か2000年頃、「カウボーイビバップ」のWOWWOW放送が終わったくらいの頃の雑誌「NEW TYPE」がビバップの特集を組んだ号だ。その号でエヴァンゲリオンで勢いに乗ったスターチャイルドの紹介記事が見開き2頁で掲載されていた。
その記事を読んで、僕は「なんじゃ、こりゃ!?」と憤慨した。
スターチャイルドのレーベル名の由来を聞かれて、スターチャイルド側が「当時の担当者が命名したと聞いています」とだけ答えていたのだ。しかも、紹介に掲載されたのが「魔境伝説アクロバンチ」のレコードって・・・・確かにスターチャイルド作品だが、代表作ではないだろう!?
この記事を読んでから、昨日くらいまでは「取材した記者も、取材に答えた広報も、仕事をさぼっている!!」と怒っていた。これでは取材したことにも、取材に答えたことにもならないだろう、いくらアニメ雑誌とはいえ、取材を軽んじ過ぎている・・・・と、解釈していた。だが、どうも藤田氏たちの引き抜きという「事件」に対する怨念がもしかするとこもっていて、彼らの名前を、代表作に触れることが禁忌になってしまった結果なのかもしれない。
最近でも国際映画社制作シリーズ「銀河旋風ブライガー」などの音源がインディーズ・メーカー という僕のしらないレーベルからCDが再発売された。これらの音源もかつてはスターチャイルドの一角を担っていた作品だ。アマゾンの購入者の紹介文に「LPレコードからの復刻ではないのか、音が悪すぎる」というものがいくつかみられた。真偽のほどはわからない。僕自身はこのCDを購入したわけではない。LPと初期のCDが手元にあるので。
だが、スターチャイルドが再発せず、インディーズ・メーカーなるレーベルから発売されたこと自体が、この音源の不遇を思わせるに十分だ。
確かに、スターチャイルドに発売の意思がなく死蔵している音源を、インディーズ・メーカーが譲り受けて(借りうけて?)再発することを、僕は歓迎すべきことだと思う。埋もれてしまうよりは遥かにいい。だが、音質の評価をみると、オリジナルテープの保管状態、あるいは誰が責任をもって管理しているのか、非常に不安になる。既にアニメ本編の制作会社もなく、音源の保管会社がこの音源に愛情を失っているとしたら、オリジナルテープが行方不明になるのも時間の問題だろう。10年後はいずこにありや?
大月氏はまだお若く(1961年生)、キングレコードへの影響力は非常に大きいだろう。音源に対する影響力は絶大だろう。
しかしだ。藤田時代の音源への愛憎はあるとしても、散逸だけはさせないでほしい。
過去の経緯はともかく、星の子の1人である音源たちについては、安住の場所を提供してほしい。
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