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雄叫び歌手、水木一郎誕生!! 「ぼくらのバロム1」

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水木一郎と言えば、「雄叫び」歌唱を売りにして成功した人だ。今もなお、現役で精力的に活動されているのが、我々の世代としては嬉しい。
水木一郎の「雄叫び」第一号と言えば、「超人バロム1」の主題歌「ぼくらのバロム1」だろう。石森章太郎が一手に原作を担っていた東映特撮番組の中で、さいとうたかをを原作に迎えた点で異色の特撮ヒーロー番組だ。未読だが原作はマスクをかぶらず、ゴルゴ顔のバロム1である。
物語では主人公の少年二人が腕を組んで「バロム・クロス!!」と叫び、超人バロム1に変身する。バロム1は悪魔ドルゲが生み出すドルゲ魔人と戦うのだが、バロム1に変身しても少年たちの自我は残っている。バロム1の状態を維持するには友情パワーを保たねばならないのだが、戦いの最中によく喧嘩をおっぱじめて変身が解除されるという展開がしばしばみられた。
また、ドルゲという名前の少年がたまたま当時、日本に長期滞在中であり、いじめにあったとかで家族から抗議が入り、番組は早めに終了となった。「この番組に登場する人物・団体は実際のものとは関係はありません」云々のお断りがTV放送で行われるきっかけとなったことはあまりに有名だろう。
「ぼくらのバロム1」は作曲:菊池俊輔、作詞:八手三郎(やつで・さぶろう:東映映像本部テレビプロデューサーの共同ペンネーム 要するに会社で自前でやってますという意味)、歌唱:水木一郎の布陣。
さて、八手三郎が作ったこの歌詞だが、冷静に眺めてみると凄いことになっている。

マッハロッドで ブロロロロー ブロロロー ブロロロー!!
ぶっとばすんだ ギュンギュギュン
魔人ドルゲを ルーロルロロ
やっつけるんだ ズババババーン!!
バロムクロスで キューンキュン
ふたりがひとり バロローム
皆でよぼう バロムワン
必ずくるぞ バーロームワン
超人超人ぼくらの バーロームワン


・・・・歌詞中の擬音率、明らかに50%を超えている。数年前に出たアニメ関係の単行本で、水木一郎は恥ずかしくてこんな歌、歌いたくないと、いやがった逸話が紹介されていた。さもありなん。水木はもちろんのこと、作曲の菊池俊輔も大いにとまどったことだろう。ガ・キーンのsweet crossでも感じたが(あっちはアニメだが)、東映は本当にやんちゃな社風だったのかもしれない。八手三郎(東映の分身)、何を思ってこの歌詞を作ったのか? これが当たると思ったのか!?
それが当たってしまった!!
水木一郎のまっとうな大人の苦悩なぞ構わず、僕を含めたクソガキどもはこの歌を聴いて興奮し、燃えまくった。菊池俊輔の手による勇壮な前奏で盛り上がったあとに「ブロロロロー ブロロロー ブロロロー!! ギュンギュギュン ルーロルロロ ズババババーン!! キューンキュン」ときたものだから、たまらない。
クソガキどもはえげつないドルゲ魔人にびびりながら、バロム1の目の中で喧嘩をする主人公二人に「喧嘩すな、ボケ!!」と突っ込み、日々、飽くことなく「バロム爆弾パンチ!!!!!」と叫んでTV画面を再現しようと無意味な連続パンチを繰り返した。
女子からみれば、阿呆そのもの。
そーなのだ。クソガキには美しさも恋も愛も酒も涙も男も女も関係ない。
勢いがよくて、何となく凄そうで、かっこいいということが全てなのだ!!

水木一郎は普通の歌手としてデビューしたが売れずに、長い下積み生活を余儀なくされた。珍しい話ではない。「原始少年リュウ」で歌手生命を復活させることができただけでも水木一郎は十分に強運(もちろん、それ以前に声が素晴らしかったからだが)である。
とは言いながら、アニメ歌手の地位を得て、実績を積めるようになってからも、「いつかは普通の歌で紅白に出たい」と思っていたかもしれない。
今でこそ紅白の敷居も(ちょっぴりだが)アニメに解放され、ショコタンが当たり前のように「空色デイズ」を歌い、水樹奈々も出場している。
だが、70年代にはそんなことありえなかった。そこら辺の恨みつらみはまた別の回に譲るとして、「ぼくらのバロム1」の歌詞を見た時、水木一郎は紅白歌合戦の姿が遥か遠く、イスカンダルよりも遠く離れていくように感じられたのではないか。
「こんな歌、歌っていて俺はどうなるんだろう・・・・」と思ったかもしれない。僕の勝手な憶測だが。
だが、「ぼくらのバロム1」は成功した。ドルゲ事件はあったものの、番組自体の人気は高かったはずだし、主題歌も人気があったと思う。少なくとも、ちょっと忘れられている「原始少年リュウ」主題歌よりは遥かに高い人気を獲得している。今でも歌える元クソガキどもは少なくないはずだ。
この歌の成功によって、水木一郎は(あるいは日本コロンビアのアニメ担当者)は「擬音の雄叫びはクソガキの魂を鷲掴みにする」という法則に気付いたのだろう。そして、僕たちクソガキどもを喜ばせることを自分の天命と覚悟した時に、「アニキ」水木一郎が誕生した。その後の「アニキ」水木一郎の活躍は語るまでもないだろう。


しかし、改めて人の運命とはわからないのだなと思う。考えてみれば、「ぼくらのバロム1」のような歌は人気歌手が歌うことは、何しろ70年代の頃のことだから100%ありえなかった。ある意味、こうした歌を勧められるということは、「それなりの格の歌手」と認定されたようなもので、勧められた側からみればありがたい仕事・実績ではなかったろう。
もしかすると、売れてる歌手に「お前、ブロロロロー ブロロロー ブロロロー!! ギュンギュギュン ルーロルロロ ズババババーン!! キューンキュンなんて歌、歌ってんだってな」と揶揄されることだってあったろう。泣く子も黙る芸能界だ。
ところが水木はこの「恥ずかしい」歌を踏み台にして成功した。社会的認知度は超一流まではなかなか届かせてくれないが、今もTVに現役歌手として登場することができている。因みに彼は2010年現在、62歳である!! この年齢で現在の活躍ぶりは、凄い実績と言えるだろう。
たとえ馬鹿馬鹿しいように見える仕事でも、与えられた職務に最善を尽くした男に与えられた栄誉と讃えたい。

この歌の成功は歌詞の持つ衝撃力、水木一郎の伸びやかで張りのある声、そして菊池俊輔の勇壮かつ美しい音楽によってもたらされた。
やはり菊池俊輔の歌いやすく、かっこよく、実は美しい旋律にあふれた曲があったから、あんな無茶な歌詞でも名曲になり、水木も(恥ずかしさは別として)歌いやすかったのではないだろうか。
菊池俊輔は本質的に旋律を歌わせる作曲家なのだと思う。その魅力を文章で伝えることは、やろうとしてみて相当に難しい。前奏があり、歌の伴奏があり、〆がある。伴奏でも彼の編曲はさりげなく豊富な音を加えて、聴く者を飽きさせない。この稿を書き始めて何度もバロム1を聴いているのだが、味わい深い。だが、他の菊池俊輔の歌(たぶんこれからも紹介する機会が多数あるだろう)と比べて、どこがどう違うのかと問われれと、答えるのが難しい。何しろ、僕自身は楽典のことなど全く知らないのだ。
とはいえ、めげずに自分でピアノを弾いて「ぼくらのバロム1」の音を探ってみると、シ・ミ・ソの音階を基本にしてファ♯を頻用していた。この音階は副主題歌の「友情のバロム・クロス」でも基本となっている。試しに「ロボット刑事」も弾いてみたら、やはりシ・ミ・ソが基本になっていた。
この音階を基本にして、「ぼくらのバロム1」は巧みに擬音の部分を歌いやすく構成しているようだ。また、飽きさせないように音階を高めに低めに変動させている。

歌はブラスの派手な前奏で始まる。シーミソーミシラシドー ラドシラソファ♯ミ。
マッハロッドで ブロロロロー ブロロロー ブロロロー!!(音階あげ↑最後に少し残響をかけて水木の声を響かせている)
ぶっとばすんだ ギュンギュギュン(音階抑えめ→)
魔人ドルゲを ルーロルロロ(フルートの伴奏。音階少しずつあげ↑)
やっつけるんだ ズババババーン!! (ブラスが勇壮さをもたらしつつ、音階もりあげ↑↑)
バロムクロスで キューンキュン(サビに移行する前に音階抑えめ→ しかし、後半で同時にバイオリンが加わり、一気に音を高めてサビに突入)
(こここから後の伴奏はバイオリンとブラスが旋律を大いに盛り上げており、何度聴いても燃えてくる。特にバイオリンに注目させられる。)
ふたりがひとり バロローム
皆でよぼう バロムワン
必ずくるぞ バーロームワン
超人超人ぼくらの バーロームワン

意外とフルートも活躍しており、ブラスの重みとフルートの軽やかさの対比が面白い。
菊池俊輔とくると、ついブラス系を連想してしまうのだが、彼は巧みにバイオリンを用いることによって音に艶をもたらしている。彼の手によるバイオリンの伴奏を聴いていると単に勢いがあるだけの音楽にならず、絃の音が色気ももたらしているなと感じられる。
こんな小曲の中に映画でも始まるのかというような前奏を使い、ブラス、バイオリン、フルートで巧みに音色を描き分け、歌いやすい音階でどことなく郷愁すらも感じさせる旋律を紡ぐ。菊池俊輔の技が冴える逸品だ。
知らない人も一度、(一人で)歌ってみてはどうか。意外と癖になります。

本当はメカンダーロボを紹介するつもりで書き始めたら、バロム1だけでえらいことになってしまった。


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