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湖川友謙対安彦良和 前篇




湖川友謙VS安彦良和・・・と言っても、別に二人に確執があったとか、喧嘩したとか、そんな醜聞めいたことではない。
イデオンとガンダムを巡って、この二人は否も応もなく比較され、結果、湖川の作画が「大衆(大勢のアニメファンも含む)」から過小評価された・・・ということを伝えたいだけだ。
だが、その評価が同時に、イデオンという作品の在り方をも端的に伝えてくれる。

二人とも出身は奇しくも同じ北海道紋別郡遠軽町。同じ高校の先輩、後輩と聞く。いづれも若くして台頭し、画期的な作品の根幹に携わり、富野喜幸と共同作業をすることによって大きく飛躍した。
だが、湖川は結局、熱狂的だが局地的な支持にとどまったのに対し、安彦は少なくともアニメ業界の中では揺るぎなく、絶対的な栄誉を与えられた。
二人に対する評価は、そのままイデオンとガンダムに対する評価と一致すると言って、ほぼ正しいと僕は思っている。

安彦良和は1947年に生まれた。彼が「勇者ライディーン(1975年放送)」の人物造形を勤めたのは若干28歳頃。当時の主流であった熱血的少年マンガ路線から外れた、どこか少女マンガ的な柔らかさを持った彼の人物造形は当時の少女たちを魅了し、巨大ロボット作品でありながら女性ファンを多く獲得したことは有名だろう。彼はその後も「わんぱく大昔クムクム」「ロボっ子ビートン」「無敵超人ザンボット3」と人物造形を手掛け、そして「機動戦士ガンダム」を契機に一気に名を成すこととなった。この時、齢若干32歳頃。
それだけでなく、ガンダムと同時に雑誌リュウに「アリオン」連載を開始。見事、マンガ家としても成功を納める。天才と呼んで一向に差し支えないだろう。

ただしガンダムにおける富野との関係は、恐らく従来の監督と作画監督のそれを超えたものであり、せめぎ合いと言ってよい対立があったようだ。
富野は言う。「安彦君は達人。誰も真似できない。彼は"それは演出の領域でしょう!?”というところまで踏み込んでくる」と述懐した。それはすなわち、「演出家の言うことを素直に通さない、扱いづらい絵描き」という気持ちの裏返しだろう。たぶん、演技はもちろん、どのように役者を動かすか、物語全体の中でのこの場面の役割は何か、絵コンテの根幹(すなわち作品の根幹)に関わる領域まで、安彦は自分の意思を主張したのだと思う。劇場用製作においても、安彦は構成に悩む富野に「シャリア・ブルの話はいらないんじゃない?」など、作劇に関わる部分まで意見を述べている。
これは監督(演出家)の立場からみれば越権行為だろう。富野は「これでは自分の作品ではなくなる」という危機感があったのではないか。しかし、富野とても無視できない説得力が、安彦の意見にはあったのだと思う。自身が表現の塊のような安彦には、黙々と富野のコンテを画像化することに満足できなかっただろう。二人はぶつかるべくしてぶつかったのだと思う。
だが、この二人の葛藤は、当事者の精神的負担や苦痛を無視すれば、作品の完成度を著しく向上させたに違いない。二人が激しく対立したからこそ、「巡り合い宇宙」が完成したのだ。
どんなに個性的な人間であっても、個人の才能には限界がある。異質な才能・思想が衝突すれば、崩壊も起こりえるが、一人々々では成しえない高みに届くことがある。衝突したならば、衝突する相手の提案以上の考えを示さねばならない。その時、己一人では得られない発想が生まれる可能性がある。
あるいは知らず知らず、衝突する相手の思想・技量が自分のそれと融合し、更なる高みに届く可能性がある。
例えば「あしたのジョー」における梶原一騎とちばてつや、あるいは映画における黒澤明と三船敏郎、または音楽界のジョン・レノンとポール・マッカートニーの関係がそうだったのだろう。
「巡り合い宇宙」は富野、安彦、どちらが欠けても、あの独特の冷めているようでいて熱気の籠った流麗な映像は生まれなかったのではないか。
しかし、こうした才能の衝突と融合は、言わば真剣で切り合うかのごとき行為なのかもしれない。日々、激しい心理的葛藤が繰り広げられる。消耗される精神力はただ事ではない。何しろ、互いに一家言持つ達人同士の戦いなのだから。故に、長続きしない。いずれ、袂を分かち、それぞれの世界に帰っていく。初代ガンダム以後の二人の関係は、表面的な共同作業に留まるものとなった。

また、そうした作品製作を巡る戦い以外にも、二人の共同作業が継続できなかった理由があると思う。それは、「政治を、政治に関わる人々をいかに描くか」についての姿勢が決定的に相容れなかったからではないだろうか。
二人が共同作業を継続しなかったのは、ニュータイプの概念を安彦が嫌ったという側面もあるとされる。だが、実は安彦は富野の政治の描き方が自分の信条と違いすぎると感じたのではないか。逐一、具体的に説明するだけの準備はない。だが、富野も安彦も60年代の政治の時代を強く経験した世代だ。当時の学生運動が分裂したように、彼らは互いに「お前の考え方は受け入れられない」と感じたのかもしれない。
安彦は庶民に近い立場から政治を描こうとする。彼は為政者、あるいは政治活動団体の長とは距離を置いた主人公を好む。えてして主人公は庶民にも成りきれず、さりとて為政者の側にもつけない彷徨う存在となる。他方、富野が最も描きたいのは為政者だ。本当は優れた為政者による世直しをしたいという欲がある。最も優れた政治体制は、圧倒的に優れた独裁者によって成されるべきだと考えている。だが、そんな理想的な為政者は存在しえないし、為政者そのものを描くことは庶民(観客)の反発を産むと計算しているのか、為政者そのものを主人公にはしない。だが、彼の主人公は為政者に密接に関わっていく。
この視点の違いが、二人を分けたのではないか。

しかし、だ。個別に活動することによって、彼らは表現の「自由」、自我を通す「自由」を手にいれ、秀作をものにするのではあるが、かつての「才能の衝突」時代を上回る作品を生み出すことはできなかった。その後に生まれた作品も優れてはいるのだが、やはり「あの時が最高だった」と「衝突の時代」を顧みられてしまうのだ。
「個別の時代」で「衝突の時代」に匹敵する傑作を残したのは、ジョン・レノンの「イマジン」くらいか?

おやおや、安彦VS富野の話が長くなってしまった。これはこれで是非とも、言い残しておきたかった。後日に書き直しをする気にはならないので、このままでご容赦を。
では、安彦の話に戻ろう。安彦には才能が横溢していた。彼はアニメーターとして達人だっただけではなく、人物やメカを造形する才能、マンガを描く才能、映画監督としての才能にも恵まれていた。
彼の人物、メカニックを含む造形感覚の卓越性を疑う者はいないだろう。人間はおろか、ロボットまで安彦が描きなおした方が遥かに美しく格好いい、というのは言いつくされているだろう。初代ガンダムも大河原邦男の原案よりも安彦の線になる造形の方が繊細さも兼ね備えて、より美しい。
それを上回る代表的な逸話が、「超電磁ロボ・コンバトラーV」の主役ロボの造形を巡る話だ。ポピー(村上克司)が設計したロボットの造形を安彦が変更したため、玩具の金型やら製造工程やらの大幅な変更を要したので、ポピーが激怒した、という話である。これについて触れると回り道がすぎるので、詳しくは触れない。いずれ。
とにかく、安彦良和は特異的な存在だ。更に彼はマンガ家としても成功する。
通常、アニメーターがどんなに優秀だとしても、マンガ家としての才能は別だ(それは湖川もそうだった)。枠が固定したアニメの画面設計と、自在なコマ割りという「文法」「語法」を持つマンガとは似て非なるものだ。だから、アニメーターがマンガを描いても、つまらないことが多い。
ところが、安彦はマンガ家としても、マンガ界全体からみても無視できない地位を獲得している。彼はマンガのコマ割りに対応できたのだ。
更に、アニメ映画監督としても一定の秀作を残した。残念ながら「ヴィナス戦記」の興行的失敗を理由にアニメ業界を引退した形になったが、「クラッシャージョー」「アリオン」そして「ヴィナス戦記」のいずれも、なにがしかの欠点はあるかもしれないが、決してないがしろにできない完成度を示した作品に仕上がっている。監督としての安彦の画風・作風は一言で表せば流麗。柔らかな線が官能的で、しかし内に秘めた(政治的な)激情の迸るものだ。
本当に彼がアニメの現場から身を引いたことは大きな損失である。だが、映画監督を続けるには、正直すぎるというか、図太さにかける人柄なのかもしれない。
フランシス・コッポラ監督なぞ、何十億という金を使って失敗しても平気だという。映画監督とは、本来、それくらい神経が太くないとできないものなのだろうが、安彦はその点で優しすぎたのだろう。
(この項、続く)
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