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思い出はバブルとともに 「不思議CALL ME」

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「星銃士ビスマルク 主題歌EP KING K07S-3069」ジャケットより

「エルガイム」が放送された1984年、MIOの第一アルバム「STARLIGHT SHOWER」が発表された。
そして、やはりその年、MIOは「星銃士ビスマルク」の主題歌「不思議CALL ME」と副主題歌「夢銀河」を歌っている。
「星銃士ビスマルク」は現実志向型のロボットアニメ全盛の時代(※1に、「マジンガーZ」的な大らかな巨大ロボット格闘路線を選択した番組だった。僕も本編をほとんど観ていないが、主題歌の映像をみれば、雰囲気は十分に伝わってくる。西部劇のガンマンスタイルの登場人物造形や、プロテクトギアという強化服を身にまとった主人公の一人が、馬型のロボットにまたがり宇宙を駆け巡る場面が描かれている。これだけで、細かな理屈、理論なんざ、どーでもいいじゃねーかという、製作者の主張が伝わってくる。
製作はスタジオぴえろ。現在はstudioぴえろという名称になっているらしい。NHK製作の名作アニメ「ニルスの不思議な冒険」で製作活動を開始し、「うる星やつら」のTVシリーズで一気にアニメ愛好家の中での認知度を高めた。更に80年代には「魔法の天使クリィ-ミー・マミ」で魔法少女路線を東映動画にとって変わって成功させたりしていた。
そのぴえろが次に挑戦したのが、ロボット番組のビスマルクだった。
どのような経緯で企画・立案されたのかはウィキペディアにも記載がない。だが、どことなく悪乗りしている気配の漂う作品だった。
ビスマルクと言う主役ロボットの名前からして、ちょっと、人を食っている。
当時、ビスマルクと言えばプロイセン王国→ドイツ帝国の鉄血宰相を思い浮かべるのが普通だった。その歴史上の鉄血宰相が、なぜに巨大ロボット? 宇宙を舞台にした西部劇っぽいロボットアニメと、19世紀欧州の政治家ビスマルクとは、僕の中では到底、結びつかない。恐らくはビスマルクという語感のよさだけで選んだとしか思えないのだ。
よくわかんないけど、ビスマルクって名前にしたんだ。としか、言いようがない。
さて、この「星銃士ビスマルク」。
僕の中ではものすごく印象の薄い番組だ。それも当然で「エルガイム」と一緒で、大学浪人していたのでTVアニメを観ている場合じゃなかったからだが、「エルガイム」はまだ富野アニメだったので、それだけでも印象には残る。しかし、「ビスマルク」となると、僕にとっては「MIOが主題歌を歌った番組」以上の印象がないのだ。
果たして、この番組の主題歌にMIOが選択されたのは、どういう「人事」の結果だったのだろうか。僕としては非常に興味深い。



当時の花形だった(※2富野アニメの担当から外されたので、左遷のようにも見えるが、ことは単純ではないだろう。いつまでもMIOで富野アニメというわけにもいかないだろうから、自然の流れで富野アニメから外れただけかもしれない。
でも、スタジオぴえろのロボットアニメというのもなかなかに微妙な立ち位置だ。何にせよ、新参物を担当するというのは、それこそ新人か、左遷か、ということになりかねない。逆に、新規取引先のテコ入れとして、実績のある担当に任せることもあるだろう。
スターチャイルドが、ぴえろのこの新番組に、どれくらいの期待を寄せていたかが、重点になるだろう。
とはいえ、この番組は、全26話予定のところが人気が出たので51話まで延長されたという。商品としては成功だ。原作を持たず、企画・立案の段階から全てぴえろが行った作品なので、大成功といっていいだろう。何しろ、「忍者戦士飛影」という後番組まで作製されたのだから。
少なくとも、MIOが歌うことによって、僕のような者まで番組のことを知ることになったのだから、彼女の存在は番組の知名度はあげたのかもしれない。

さて、ビスマルクに寄せられた主題歌「不思議CALL ME」は、いかにも80年代という仕上がりの歌だった。作詞:大津あきら、作曲:鈴木キサブロー、編曲:戸塚修、歌唱:MIOの布陣。

歌詞GET 不思議CALL ME

正直、雰囲気優先の言葉が並ぶ歌詞だ。「まばたくシネマ不思議色」と言われても、「不思議なのは、お前だよ!!」と突っ込みたくなる。
だが、こうした点が、いかにも1980年代だった。
この番組の翌年になるが、1985年のプラザ合意をきっかけに、それまで1ドル200円台だった幸せな時代が終焉した。円が安い設定で「守られていた」ことによって、日本の輸出経済の成長をもたらされていたが、その設定保護が解除されたのだった。
急速に進んだ円高はやがて、輸出中心の産業構造から内需拡大へと変化をもたらした。その結果が、土地を担保とした過剰融資を引き起こし、金余り現象を起こして、日本にバブル景気という空前絶後の好景気をもたらした。
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などという浮かれた言葉が世間を席巻した。証券会社の最盛期であり、日本の企業は米国の一等地を買い漁った。
栄養ドリンク「Re-Gain」の広告が、「24時間、戦えますか?」と高らかに歌い上げていた。

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60年から70年安保の時代を学生運動に費やした団塊の世代は、この時代、30~40歳代の企業戦士としてバブル経済の中心にいたわけだ。50~60歳代になっていた昭和一桁の焼け跡世代は上級管理職の立場にあり、ひもじかった青少年時代の反動のごとく、狂ったような経済繁栄に酔いしれたことだろう。
1980年代、この時代、日本人は基本的に裕福だった。一億総中流化が見事に達成された時代だった。生活の心配を、大方の国民はしないですんでいた。年功序列、右肩上がりの成長、定期的な昇給、国民皆保険に国民年金がまだ機能していた時代だった。
だから、「いかにして生活を楽しむか」が、国民の意識の中心になった。



どこいったんだよ、政治意識。
そんな時代だから、生活感のない歌がうけた。
その最たるものが、松田聖子の一連の歌謡曲だろう。
それはもう、流行のお菓子に砂糖とシロップと生クリームをたっぷりとまぶせて、明日はどうやって生きようかなんていう生活感は野暮の一言で片づけて、どうやって今を楽しく遊ぶかが、どれだけうっとりするような虚飾をまとうかが、人生最大の目的だというような風潮だった。

「不思議CALL ME」は、そうした時代の一端を担ったような歌だった。
上の歌詞をみて欲しい。大津あきらは恐らく、意図的に、感覚だけのきらびやかな言葉を並べている。この上っ面の華やかさこそが、1980年代を具現しているのだ。
「舞い踊れ夜空に 銀河のワインをふりまいて」「ぬくもりという名の 心の惑星さまようの」という言葉の並びには恐らく深い意味はなく、言葉そのものの表面的な心地よさを巧みに使用したものと言えるだろう。
ここでのMIOの歌唱は、あまり個性を前面に出さず、歌詞のきらびやかな響きを、素直に、心地よく歌いあげるものだった。
元々、彼女の声は個性的なのだが、歌い方によっては聴く者を疲れさせてしまう。それを、個性的な声をいじらずに、言葉の響きが素直に伝わるように乗せて運ぶ歌い方だと思う。
だから、全然中身を知らない番組の主題歌なのに、この歌はすっと僕の心に馴染んでいる。
作曲の鈴木キサブローの曲も、聴きやすい。この人は一般歌謡曲もアニメソングも多数手がけているが、失礼を承知で言うが、僕が思っていた以上に名曲が多い。
ミッドナイト・サブマリン(未来警察ウラシマン)(※3
輝く瞳(巨神ゴーグ)
秘密く・だ・さ・い(メガゾーン23)
スターダストボーイズ(宇宙船サジタリウス)
ウルトラマンメビウス
これ以外にも多数の曲を手掛けている。上記の歌を眺めてみても、それぞれ個性的で、しかも聴きやすい。

副主題歌「夢銀河」も同様だ。奇をてらわず、幸せな感覚だけが伝わる歌に仕上がっている。

歌詞GET 夢銀河

こちらは「不思議CALL ME」に比べると、まだ物語性が保たれており、より一般歌謡曲的な歌詞になっている。アニメの映像も、王子様が迎えに来てくれるのを待つ女子の夢物語が主題になっていた。
「星銃士ビスマルク」の主題歌と副主題歌は、80年代の幸福な時間の片鱗を閉じ込めたものであり、MIOの歌声は、当時の空気を思い出させる優しさに満ちており、それが、今の時代から振り返れば、逆に切なさを思わせるのだ。

その80年代のお祭りが「終演」して、「失われた10年間」の時代が始まった時、別冊宝島は「80年代ってなんだった、はっきりいって、カスだった!!」という過激な題名を披露した一冊を作製したものだった(※4。
桑田佳祐の「真夜中のダンディー」は、過ぎ去った栄光の時代への未練に包まれた人々を乾いた歌で表現した。
もうニ度とは帰らない栄華のひと時を、僕は「不思議CALL ME」を聴くと思いださずにはいられない。
でも、僕はこの歌も大好きなんだ。




※1)でも、考えてみれば同時期の「エルガイム」だっておとぎ話と言って差し支えない内容で、現実志向とは言えない。この作品の発展形である「ファイブ・スター・ストーリーズ」を、永野護はおとぎ話と自己評価してはばからないし。「機甲界ガリアン」にしても、やはりおとぎ話系だ。
こうしてみると、現実志向型ロボットアニメという分野に区分される作品は、実はそれほど多くないと思う。WEBアニメスタイルの記事「第267回 リアルロボットアニメの終焉」の記事をみていただくとよいが、1984年で現実志向型のロボットアニメと言えるアニメはほとんどないのではないか? 「ガルビオン」と「サザンクロス」くらい??
WEBアニメスタイル
結局、サンライズのロボットアニメとマクロスの人気が目立っていたというだけに過ぎず、世のロボットアニメの大半は巨大ロボット格闘路線だったのだなあと思う。
※2)花形・・・・う~ん、花形だったのだろうか? エルガイムも人気が出て、放送を延長したらしいが、でもテコいれで翌年「Zガンダム」が始まっているし。よく、わからん。
※3)この歌もいかにも80年代的。ふわふわした軽やかさが心地よい。
※4)かつては世相を巧みな切り口で評してくれた別冊宝島も、今やロマンアルバム的商品しか出さなくなった。
別冊宝島「80年代の正体」紹介記事
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