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MIO ファーストアルバム「スターライト・シャワー」A面

MIOスターライトシャワー表
出典:MIO STARLIGHT SHOWER 1984 KING RECORD K28G 7197 ジャケット表

MIOのLP第一作「スターライトシャワー」が発売されたのは1984年のことだ。ご存知の通り、「重戦機エルガイム」の主題歌がアルバムの題名になっている。
色々と語りたいことはさておき、アルバムのことを紹介したい。
その前に、著作権に配慮し、歌詞のまる写しはしないように僕は心がけているのだが、このアルバムに収録された歌の知名度はエルガイムの2曲を除けば、無念なことに、あまりにも非常にも低く、恐らくここでしか歌詞を確認する機会がないと考えられる。
紹介が目的であること、非営利的ブログである点も踏まえて、歌詞全文を引用することにご理解いただきたく思う。(※1

このアルバムには全10曲が収められている。題名を順に並べていこう。
1) モーニング・ベル
2) 風のデュエット
3) ピアリッツの休日
4) Good-bye TOKYO
5) さよならはtenderly
以上がA面。以下はB面。
6) エルガイム- Time for L-GAIM –
7) 阿母麗
8) MINT BAR
9) マジィック・シティ
10) スターライト・シャワー

なお、解説書にはローマ字表記で製作関係者の名前が小さく連ねられている。
製作:藤田純二 製作補助:シラサカヒロミ(GENERAL PURPOSE ENTERPRISE CORP.)監督:オバタツオ等々・・・。ヘアメイク関係者(※2の名前やMIOファンクラブへの謝意も述べられている。
また歌詞の欄では演奏関係者の名前も同時に記載されている。

1曲目の「モーニング・ベル」と9曲目の「マジィック・シティ」が作詞:三浦徳子、作曲:小田裕一郎、編曲:大谷和夫の布陣。
2曲目の「風のデュエット」と5曲目の「さよならはtenderly」が作詞:竜真知子、作曲:杉井キサブロー、編曲:武部聡志の布陣
3曲目の「ピアリッツの休日」と8曲目の「MINT BAR」が作詞:売野雅勇 作曲:筒美京平 編曲:戸塚修の布陣
4曲目の「Good-bye TOKYO」と6曲目の「阿母麗」が、作詞:井荻麟 作・編曲:馬飼野康二・・・・あの、布陣である。

新たに書き下ろされた8曲は上記のように4つの作詞・作曲の布陣によってしたためられ、演奏者も各布陣によって別個に集められたようだ。
(エルガイム関連の2曲は既に触れたのでここでは割愛するが、エルガイム演奏スタッフの中に、さりげなくシンセサイザー演奏の大御所:難波弘之(※3が加わっていたことを記しておきたい。)

それでは、A面から触れていこう。
冒頭の曲は「モーニング・ベル」‐5分6秒の作品である。

Pf.大谷和夫
E.B.岡沢茂
E.G.鳥山雄司
Dr.滝本季延
L.P.斉藤ノブ
Syn.大谷和夫
A.Sax菊地康正
Vl.友田啓明Strings
F.Cho.イブ

アルバムの1曲目はいわゆる「つかみ」が求められるのだが、この「モーニング・ベル」は非常に爽やかな曲調で始まり、最後まで幸せな雰囲気を漂わせながら終わる。
「Wake up morning 昨夜(ゆうべ)の あなた残るわ」
「my sweet song バルコニー風が吹く・・・」
英語の歌詞と日本語の歌詞を交互に並べるなど、趣向を凝らしている。
爽やかすぎて見過ごしそうになるが、彼氏と一夜を過ごした翌朝の情景である。片思いで終わるかと不安だったけど、無事に彼とできちゃったし、その後も海にデートに連れて行ってもらって、ハッピー&ウキウキ状態の80年代都会生活満喫女子の恋物語を綴った歌である。
そこには何の陰りも不安もない。菊地康正によるサックスの、心地よい夏の風のような間奏を聴いていても、当時の「生活には何の不安もないの、彼氏と仲良くできるかどうかが一大事なの」という空気が蘇ってきて、個人的にはちょっぴり心が痛い。
この歌を聴いていると、わたせせいぞうの「ハート・カクテル」を思い出す。くせのないお洒落な画風で幸福な時代の幸福な都会生活の中の幸福な男女を描いた作品だった。
ここでのMIOの歌も幸せいっぱいな20代女子を素直に表現している。



続く「風のデュエット」もまた、夏の爽やかな想い出をつづっている。やはりサックスが間奏で活躍する。ここでは土岐英司のサックスが聴ける。4分12秒の曲。

「あれは 夏草の丘へ 初めて二人で 出かけた午後」
「木立をぬける 風はデュエット かすかにそよぐ コスモスの道」
「Once upon a time それは初めて 誰かを愛した日のこと」

Pf.武部聡志
E.B.美久月千晴
E.G.鳥山雄司
Dr.林立夫
L.P.木村誠
F.G.高島政晴
A.Sax土岐英司
Syn. 武部聡司(※4
Cho.比山清
  木戸泰弘
  大塚修司

この曲も歌詞そのままに、夏の青空が広がるような爽やかな音で満たされている。
強いて言えばユーミンの「守ってあげたい」の雰囲気に近い、ちょっと愛らしい導入から始まる。そして、「あれは夏草の丘へ」の旋律が耳に心地よい。
シレラソラソラソファソミ・・・でいいのかどうか、たぶん、違うのだろうが、まあ、これに近い旋律。ここでのシの音が一番低く、軽やかに階段を駆け上がるように「あれは」と歌う。
この旋律は、その後も「初めて」「なぜか」「それぞれの」の言葉で繰り返し用いられ、一定の間隔で吹きすぎていく涼風のように耳をくすぐる。
MIOの歌声も涼やかで、夏の気分に浸れる歌だ。
「木立をぬける 風はデュエット」で歌は動きを見せ、「かすかにそよぐ コスモスの道」では一緒に歩く二人の前の情景が広がってくるように音も弾む。
「何を秘密にしたかったのか わからないまま 歩いたあの日」
と綴られた部位は、ある意味でこの歌の中心になっていて、ただ一緒にいることそのものが楽しくて幸せだった気分に溢れていて、MIOも「何を秘密にしたかったのか」の箇所を優しくも力点を置きながら歌い、「わからないまま 歩いたあの日」は開放的な声で歌い上げている。

Once upon a time

かつての幸せな出会いと記憶。そっと「それは初めて 誰かを愛した日のこと」と締めくくる。
この歌に横溢する幸福感は、捨てがたい。

続く「ピアリッツの休日」は趣を変えて、ややけだるさを伴う4分16秒の曲。

「>グラスを抜ける風 潮騒を運ぶ 唇触れた蜃気楼ね 夏は・・・」
「消えてく真夏の面影 探すように  海鳥が時間の波間 かすめて飛ぶわ」

Pf.永田一郎
E.B.長岡道夫
E.G.芳野藤丸
Dr.菊地丈夫
L.P.橋田政人
F.G.高島政晴
Syn. 戸塚修
Cho.比山清 木戸泰弘
Vl.友田啓明Strings

ピアリッツとはフランス南西部、スペイン国境に近くに位置する海辺のリゾート地であり、フランスでは有名らしい。
ピアリッツ
ピアリッツ
曲も静かに始まり、癒し系の響きを醸している。最初はMIOの「ルルル・・・」とささやくようなスキャット(※5で始まる。後はゆったりと、気だるそうに、しかしくつろいだ雰囲気に満たされた世界が広がる。
それにしても、何故にいきなりピアリッツなのか、そもそも1984年の当時、どれだけの人間がピアリッツと聴いて反応できたのか、それもアニメ愛好家が主流だったMIOの顧客層を相手に、何を考えてピアリッツだったのか・・・・当の僕さえ、この稿を書くまでは「ピアリッツって、何?」状態だったというのに。
明らかにこのアルバムがアニメ愛好家を置いてけぼりにしようとしていたことが伺える1曲なのだ。
だが、この歌から漂う「異国で過ごす夏休み」気分には、浮世を忘れさせる香りがする。
繰り返すが、「浮世を忘れようとした80年代」の夏休み、磯の香りが漂うような、出崎アニメの海辺の場面のようなくつろぎ、おだやかな風が吹きすぎていくような歌なのだ。
歌は終始、穏やかな様相で経過し、最後の「素肌の上のあなたはさざ波ね」で満潮時の波が高まるかのようなおっとりした盛り上がりを見せて終わるのである。

さて、次の「Good-bye TOKYO」はこれまでとは打って変わって、ギラギラした夜のネオンのきらめきか、あるいは朝靄を掻き消す乱舞か、「ピアリッツの休日」の静から一気に動へと変わる3分50秒の歌である。
作詞:井荻麟 作・編曲:馬飼野康二・・・そうあのデビュー当時の布陣の再来だ。

「濡れた膝の かすり傷 二人の朝を 痛くする」
「あんたの背中 忘れたい ひとりで戻るさ ナイフを持って」
「あんたの背中 忘れるよ 旧い痛みは みんな捨てて 私を継ぐもの 探すのさ」

Pf.松浦義和」
E.B.杉本和弘
E.G.鳥山雄司
Dr.宮崎全弘
Syn. 馬飼野康二
Backing Vocal MIO

どうだ、井荻(富野)の体臭が紛々とする歌詞ではないか。暗喩・隠喩で固められたかのような言葉が並ぶ。到底、文系門外漢の僕には解き明かせない。
普通の恋歌が続いた後で、いきなり異世界の歌に跳躍してみせている。
もしかして、ただの失恋を外連味たっぷりに語っただけなのかもしれない。
だが、この歌を聴いていると、何とも言えない心地よさを感じる。
ぜんたい、何が「TOKYO Good-bye」なのか? だが、「髪をみじかく切ったなら 森の幻 思い出したんだ」とか、「街の孤児(みなしご) 連れ出して」のような言葉が並ぶと、まるで東京という都会の真ん中に、ぽっかりと異界に通ずる空間が口を開けて、通りすがりの僕を飲み込むような感触に襲われるのだ。
この独特の富野節の歌詞に、馬飼野は躍動感に満ちた曲を与えている。そんな派手な音の動きはないのだが、前拍を強調した挑戦的な響きの歌に仕上げている。

ーれた ーざの 、き、ず
たりの ーさを 、す、る

前拍の強調は、挑戦的、攻撃的な調子をもたらし、歌い手の挑みかかるような視線すらも感じさせる。
「森の幻」「街の孤児(みなしご)」にどのような意味合いを込めたのか。「あんたの背中 忘れたい」という「あんた」とは、ただの恋人なのか、それとももっと違う存在の誰かなのか。
MIOの躍動に満ちた声は、TOKYOから、いずこかの異界への扉を開いている。
結びの前に歌われる
「あーあ ひとり ねむり あーあ ゆらめき あーあ もりが とおい」
がまた、歌の情景に遠近をもたらし、白昼夢をみているような錯覚を覚えるのだ。


A面最後の曲は「さよならはTenderly」-3分58秒の佳品である。

Pf.武部聡司
E.B.美久月千晴
E.G.鳥山雄司
Dr.林立夫
L.P.木村誠
F.G.高島政晴
A.Sax土岐英司
Syn. 武部聡司
F.Cho.MIO
Vl.多 忠明Strings

物静かに始まる、優しい歌だ。「風のデュエット」と同じ、竜真知子と杉井キサブローの布陣による曲だ。
ここでは間奏にエレキギターが活躍する。鳥山雄司のエレキギターの奏でる響きは、サックスの幸福感とは打って変って、何かしら「痛み」を感じさせる。
冒頭は淡々と孤独を歌う。失恋の歌だが、「波が荒れ始めると 夏ももう終りね 季節となぜ同じに あなたも行ってしまうの」での静かな、されど押し殺せない激情を、MIOが豊かな声量の声で歌い語る部位が素晴らしい。

「だから さよならはTenderly 夏色の場面から」
「立ち去るわ Tenderly だけど今も あなただけが好き」

この歌詞に込められた、愛しい人に去られる女性の悲しみをあらわすMIOの演技は、絶妙だ。淋しさに包まれながらも、その佇まいに美しさを感じずにはいられない女性の輝きに満ちている。
切ないのに輝かしい。
MIOの声だから、そう思える。

これでA面はおしまい。次回はB面についてお伝えしたい。


※1)他にも個人的にこのアルバムの歌詞を記録したHPはある。
※2)普通、アルバム関係者の紹介ではヘアメイク担当まで触れないものだろうが、よほど髪型が得心できる仕上がりだったのだろうか・・・・。
※3)シンセサイザー演奏者であり、作曲や一時はSF小説も書いたりしていた。1980年代に彼のシンセサイザー入門書を読んで、シンセサイザーを欲しいと叫んでいた時期もあった。もっとも、当時はシンセサイザーも効果で、手が届くのは単音しか出ない程度のものだったが。和音が鳴らせるコルグのシンセサイザーに憧れたものだった。
確か、故栗本薫とも親交があったと思う。SF小説を題材にしたアルバムも作ったりして、懐かしい。
ウィキペディア 難波弘之

※4)Pf.武部聡志とSyn. 武部聡司・・・解説書にはこの2種類の記載がある。誤植だろうと思ったが、どちらも同じ頻度で出現する。でも、たぶん誤植。鍵盤演奏や編曲で名を成した武部聡志が正しいのだと思う。
ウィキペディア 武部聡志


※5)由紀さおりの「夜明けのスキャット」が2011年に米国で人気爆発したことは有名(おかげで?2011年度の紅白は休場)、スキャットとは「ジャズなどで、歌詞の代わりに意味のない音で即興的に歌うこと(yahoo国語辞典から)」だそうで、必ずしも「ルルル・・・」だけではないのだろう。
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コメント

[C12] ご無沙汰しております

こんばんは、毎回ディープかつ興味深い話を楽しく読ませていただきます。いつも管理人さんの記事に頭下げてるばかりです。

管理人さんもご存知のとおり、このアルバムはCDとして復刻されましたが、私も一枚買いました。

最初に聞いたとき、私も「Good-bye TOKYO」のストーリー性の強さにただただ驚くばかりでした。ご指摘のとおり、暗喩に聞こえそうなところも、つまる所ただの失恋を歌うことかもしれませんが、それでも想像せずにいられない言葉選びに感嘆ですし、それらの言葉とMIOの歌声を上手く融和した曲もさすがとしか思えませんね。

あと、管理人が前後の記事で当時のMIOの方向性の問題を指摘しましたが、一般的な歌とアニメソングは対極にいると、この「Good-bye TOKYO」はちょうどその中間にいる印象が与える曲だと、門外漢の私が感じています。

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