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寄り道したら星空を見上げよう「星空のメッセージ」

寄り道をします。ごめんなさい。



「宇宙刑事ギャバン」が、当時の東映の特撮部門にとって大きな賭けであったというのは有名な話だ。子供向け番組としては破格の製作費をかけ、これでこけたら製作の責任者の首がとぶのは確実だったらしい。
結果は期待に十分応える業績をあげたようで、以後も後続の作品が継続して製作されていることから明らかだろう。
そうした現場の覇気が伝わったのだろう。音楽を担当した渡辺宙明も渾身の力作を書き上げた。主題歌にとどまらず、挿入歌どれ一つして「流した」感がない。劇判音楽でもレーザーブレードの旋律は、その爽快さ、かっこよさで一つの様式美を確立した。

主題歌「宇宙刑事ギャバン」の前半は、「イナズマン」や「秘密戦隊ゴレンジャー」の主題歌と同じ基本構造になっている。
「戦えイナズマン」(作詞:原作者の石森章太郎、作・編曲:渡辺宙明、歌唱:子門真人の布陣)では
-渦巻くバンバの
‐悪の闇
‐電光放射で
‐切り裂いて
の節々に逐一、合いの手を進めてからサビにはいっていく。
「秘密戦隊ゴレンジャー」(作詞:八手三郎、作・編曲:渡辺宙明、歌唱:ささきいさおとこおろぎ73)でも
-真っ赤な太陽
‐仮面に受けて
‐願いは一つ
‐青い空
と区切りながら、最初は歌が進んでいく。
ギャバンでもそうだ。
‐男なんだろ
ここで歌の流れが一端、途切れて、伴奏がズッテケズッテケズッテケズッテケと音の力を溜めていく。この間も単に伴奏が流れるのではなく、次第に音階をあげて、次に始まる歌の物語、盛り上がりの予感も流している。
そして
‐ぐずぐずるなよ
でまた、旋律の流れを切って、エレキギターがじらすように間を作る。
‐胸のエンジンに(ズッテケズッテケズッテケズッテケ)
‐火をつけろ!!(今度はエレキが盛り上がる)
ここから後は
‐俺はここだぜ ひと足お先 光の速さで明日へ ダッシュさ
と一気に歌いきって、歌の核心へ進んでいくのだ。
渡辺宙明文筆館
http://www.chumei.net/note/d02_fancolle41_gyaban.htm

上記の記事は是非、目を通してほしい。息子でやはり作曲である渡辺俊幸(※1の関わり、編曲に携わった馬飼野康二やハーリー木村について触れており、非常に興味深い内容だ。
ギャバンの音楽は渡辺にとっても画期的な存在になったろう。主題歌では編曲に馬飼野を迎えた結果、それまでにない色合いが渡辺の音楽に注ぎ込まれ、それがまた更に魅力を増す結果となった。それが、30年の時を超えてなお、人口に膾炙される歌と成りえたのだ。
ただし、後続の宇宙刑事作品シャリバンとシャイダーとなると、語り口がまた変わってくるのだ。
シャリバンでは勇壮さが前面に押し出され、戦いの歌が中心になる。(※2 
他方、最終作のシャイダーはよりおとぎ話的な作風に変わり、童謡的、時に実験的(※3な内容になっていく。

ただ、ギャバンは父子の物語であるためだろう、挿入歌も戦いの歌とともに、情を注いだものがもう一つの柱となっている。そこにこめられた情が、今、改めて僕を引きつけてやまない。情を注ぎ込んだのは作詞の山川啓介である。

挿入歌「父よ」は主演した大葉健二を歌唱に配している。
主人公ギャバンの父は(宇宙刑事ボイサー)は、敵である犯罪組織の捕虜となっている。その父への思いを綴った歌だ。
歌詞も、物語の設定を直截に引き継いでいる。生き別れの父という歌詞は、実生活では共感できないし、物語の上でしか存在感のない歌ではないのかと、考える人もいるかもしれない。
だが、父に限らず、誰かのことを「きっと生きている 必ず会える」と思っている人もいるかもしれない。
死に別れたとしても、思い出を重ね合わせることもあるかもしれない。
今、しみじみとこの歌にはそうした力があると感じている。
歌唱を担当した大葉は、本来が役者であるし、決してうまくはない。昔の僕は彼の歌を下手だと感じていた。だが、音程を外すこともないし、音痴ではない。今となっては、むしろその素朴な歌が、よりこの歌に実感をもたらしているようにすら思える。
この体も勇気も あなた譲りさ
男の誇りも 胸にあふれる夢も

最近、僕はこの歌を聴くと、60代でこの世を去った父のことを思い出すようになった。
生き方の違いから、晩年の父と僕の関係は決して良好ではなかった。この世を旅立つ時、彼は淋しかったかもしれない。
僕は自分の選んだ生き方を悔いたことはない。
だが、親孝行の気持ちで言えば、父と反目していた当時の僕に、せめて今くらい、人としての力量が備わっていれば、もう少し彼を安心させることができたかもしれないと思う。
しかし、人とは突然変異のように、急に成長はしないし、できないのだ。
今の僕がこうしてあるのは、47年間の人生の積み重ねの結果なのだ。この何年かでさえ、僕は少しずつ変化を続けているのだ。今の僕を当時の僕に求めても、それは無理なのだ。
父には当然ながら、短所もあった。というか、短所はむしろ多かった。
だが、長所もあった。
その彼の長所短所を噛みしめながら、僕の人生に交わる人々との関わりの中で、僕は変化しながら生きていく。
旅は苦しくて 戦いはつらい
それでも それだけあなたに近づく

昔は山川の歌詞はあまり胸に響かなかった。この歌のこともあまり気にも留めなかった。
だが、父を失い、自分自身が父となり、この年になると切々と胸を揺する。

「青い地球は母の星」は山川の詩に作・編曲ハーリー木村、歌唱:ハーリー木村、コーラス:川島和子の変則的な布陣で挑んでいる。

歌詞GET 青い地球は母の星

静かな歌である。だが、美しい。静かに耳を傾けると、山川が綴った色彩豊かな風景描写が生き生きと脳裏に映し出されてくる。それはもしかすると、彼が少年の頃にみた風景ではなかったのかと思えてくる。
二番の歌詞の自然界色も鮮やかだ。山川の言葉の中で、世界が色づいている。その世界をハーリー木村が哀調を籠めながらも美しく語っていく。
生命とは色鮮やかであり、美しいものだ、僕たちの生きている世界は美しいのだという思いを優しく歌った佳曲だと思う。
恋歌や戦いの歌よりも、むしろこうした歌の方が実は難しいのではないだろうか。ともかくも山川の作詞に脱帽する歌だ。

最後に、ある種、僕の心の中の殿堂に入ってしまった歌について触れよう。
副主題歌「星空のメッセージ」作詞:山川啓介、作曲:渡辺宙明、編曲:馬飼野康二、歌唱:串田アキラの布陣である。

うたまっぷ.com 星空のメッセージ

・・・あなたはこの歌詞を読んで何を感じるだろうか。僕にとっては、特撮番組の副主題歌の域を超えた、人生の応援歌と感じられる。
温もりをこめたエレキギターの響きに誘われて、歌は始まる。串田アキラが切々と、夜空の下に佇む男の心を語っていく。
さりげなく刻まれた「悲しみの 重さにうつむく時は」、人生のどこでやってくるかわからないものだ。ふいにやってくることもあれば、波のように押し寄せてはひくこともある。
うつむいてしまいたくなる時、それでもあなたは一人ではないことを教えてくれる存在があるはずだ。
満点の星空がもしも見えたなら、その一つ一つがあなたにささやきかける。
‐立ち止まるな 弱音をはくな 夢をあきらめるな
だが、空を見上げなければ、そのささやきは聴こえない。一人で勝手に憎んだり、怒ったり、悲しんだりしている間は、ささやきは届かない。ささやきを、メッセージを聴こうとすること、聴けるようになること、それが成長なのだと思う。
‐数えきれない 光がささやく あたたかい 星空のメッセージ
あなたが耳を澄ませば、今まで聞こえなかった応援の声が聞こえてくるかもしれない。

番組の副主題歌の映像は、ギャバンの勇姿を映して終わるのだが、この歌が背景に流れれていると、不思議と温かさを強く感じたものだった。
言霊を強く感じる歌なのだ。
上に綴った二番の歌詞でも
‐寂しさは 愛を強くしてくれる
という言葉は真実だと思う。
‐俺もそうさ 負けやしないよ
今も、僕はそうつぶやきたくなることが多い。当たり前だ。仕事とはそういうものだから。考えの違う人間たちが、無理矢理に集まって社会を作り、そこで生き残っていくために様々な思いを交錯させるのだ。その断片として生きていけば、心地よい、楽なことばかりではない。逆に言えば、お互い様だ。お互い様だから、心も開いて、相手の気持ちを汲めるようになれば、少しは自身も穏やかな心持で生きていける。家族にだってそうだ。僕がカリカリしていれば、家族だって寂しいだろう。寂しさは広がりやすい。でも、逆に寂しいという気持ちに素直に向かい合えば、「愛を強くしてくれる」。そして、
‐強い奴こそ 笑顔は優しい
のだから。
それにしても、この数か月、何度、山川の言葉を反芻したことだろう。
特撮番組の歌詞に、彼が残していった言霊たちが、30年後の今も僕を励ましてくれる。
彼の言葉は、彼の信条そのままが歌詞になって記されたようにすら思える。
山川には、彼の生い立ちや青春時代、作詞に関するこだわりなどを是非、伺いたい。
そして、感謝の気持ちを伝えたい。
すばらしい言葉を、歌を、ありがとうございます、と。

※)僕が渡辺俊幸の名を知ったのは、「銀河漂流バイファム」の音楽を担当した時だった。父親の宙明が仕事を依頼されたのは、基本的にB級映画、特撮やアニメ作品の音楽担当であり、決して映画音楽家として格式は高くなかった。芸術祭参加作品や大作の映画を任されることはなかった。それが音楽の魅力とは別であるのは言うまでもないのだが、それは愛好家の考えであり、本人としては依頼があればいつでも応じてやるくらいの気概はあったことだろうし、そうした機会を得られなかったことには忸怩たる思いがあったかもしれない。ある種、父の無念を晴らしたのが息子の俊幸である。彼の音楽をたくさん聴いたわけではない。だが、「バイファム」の音楽は奇をてらわない、素直な語法で描かれた音楽だと感じた。個性や忘れがたいという点からみれば、父の宙明の音楽につい軍配をあげたくなるのだが、そのくせのない音楽が評価され、俊幸はNHKニュースの番組主題曲、そして大河ドラマの音楽を任されている。重ねていうが、権威が選んだから優れているわけではない。そういう意見も承知の上で、父の果たせなかった世間の評価、権威の評価を俊幸が手中にしたことは、凄いことだと思う。
※)物語やヒーローの基本色において、「ウルトラマン」「ウルトラセブン」と「ギャバン」「シャリバン」は共通項目が多い。先ず、未来的な印象の強い銀色の基調色のヒーローが情の要素の多い物語を紡ぐ。次のヒーローは打って変って闘争的な赤色の基調で戦いを前面に押し出した物語を展開する。因みに上原正三はこの全てに関わっている。もちろん、造形には関与していないのだが。
※)以下のHPでは不思議ソングについての渡辺の談話が保存されている。渡辺を敬愛する人々の才能が更に注がれることによって、より広い音楽の世界が築かれた様が語られている。僕はシャイダーは一度もみておらず、決してこの歌も好きではなかったというか、興味がなかった。だが、こうして調べてみて改めて聴いてみると、急に面白い歌に感じられてきた。人々の思い出を踏まえて歌に接すると、それまで感じなかったものがもたらされ、自分にとってのその歌の魅力を見つけることができるのだなと思った。
渡辺宙明文筆館:不思議ソングについて
http://www.chumei.net/note/a11_cq7089.htm
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